2025年2月26日水曜日

Octavia Wynne "Poetic Meter and Form" [詩の律と形式]

 Poetic Meter and Form (Amazon.co.jp)

英語の詩における形式、特に律(リズム)の解説。韻のほうはほとんど話されていない。俳句みたいな英語以外の話もあるが、この本には英語しか出てこないので、英語以外の律については辞典でしかない。

と言うと、マニアックな文学研究者しか読まないような感じになるが、わたしとしては、これは英語学習の基本だと思っている。わたしはかなり子供の段階で勉強したし、一瞬だけ行ったことのあるBerlitzでも多少扱っていた。別に内容を覚えてはいないが、詩に興味が無くても、ナチュラルに聞こえる英語を話すためにはリズムの話は避けられない。現代でもrapとかを理解するためには必須項目のように思われる。

というのも、本書でも軽く触れているが、英語は日本語やフランス語と違って強勢で話す。大げさに言うと"Canada"という単語を日本語もフランス語も「カ-ナ-ダ」と発音するが、アメリカ人は"Cand"くらいにしか発音しない。こんなことなんでカナダ人のフランス語はフランス人でも聞き取れないとかアメリカ人がスペイン語の語尾を真面目に発音しないので意味不明という話になるが、それはともかく、英語を日本語みたいに平ぺったく発音していると英語っぽく聞こえないという事実がある。この事態を矯正するためにもこういう勉強はしたほうが良い。

根本的な理由として日本語が高低アクセントで英語が強弱アクセントなせいだが、別に日本語教室では音の高低なんて教えていない。マニアックな日本語教室で橋と端と箸とかやっているかもしれないが、アナウンサーレベルでもどうでもよくなっているだろう。わたしはやたらこういうのが気になるので「次は根津。The next station is nedzu.」の根津とnedzuのアクセントが違う(低高と高低)とか文句を言っているが、誰も気にしていない。中国語は音の高低で意味が違ってしまうが、日本語では高低は大して問題にならない。

アクセントには違いがないが、日本語のアクセントがわりとどうでもいいのに対し、英語でアクセントを間違えると本当に通じない。英語でアクセントを間違えるのは日本語で母音の長短を間違える以上の重罪の気がする。日本語の英語学習書でもリズムに着目している本は多くあるんだろうけど、そういうことでは詩が一番の気がする。

Bloomsbury Pub Plc USA (2016/2/16)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1632864444

2025年2月25日火曜日

Adina Arvatu, Andrew Aberdein, Merrily Harpur "Rhetoric: The Art of Persuasion" [修辞:説得の技術]

 Rhetoric (Amazon.co.jp)

いわゆる修辞学ということで、こういうのやたら好きな人もいるが、実際にはこのWooden Booksの薄い本で網羅されているような気もする。修辞学は論理学と文法学とと並び称されるLiberal Artsの一部門だが、わたしとしては、そんなに価値があるのか不思議に思っている。一度調査したほうがいいかもしれない。それはともかく、欧米ではこんなのはわりと基礎的な教養としてみんな学習していて、彼らがやたら弁論とかが得意なのはそういうこともあるんだろう。

Bloomsbury Pub Plc USA (2016/2/23)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1632864437

Amy Jones "Narrative: Telling the Story" [物語:話を伝える]

 Narrative (Amazon.co.jp)

簡単にいうと小説の書き方の幾つかの側面の解説。「誰を語り手にするか」のほか、時制や、プロットを複数進行させるとか、手紙などの劇中劇みたいな方法とか。この著者のWooden Booksの本を読んだら、一通りフィクションを書くための方法論が揃うのかもしれない。映像でも同じことだと思うが。個人的にはフィクションについては読むだけだし、読書量の中でフィクションの占める割合は小さく、あんまり裏側のことを知りたいとも思っていないんだが…。あまりこういうのを知り過ぎるとシニカルな読み方になってしまう。しかし、わたしが小説を読まないと言っても、普通の人よりは圧倒的に大量に読んでいることに変わりはなく、どのみち裏読みみたいなことは避けられない。それか、いつか自分がフィクションを書く日が来るか…。

Wooden Books (2022/11/1)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1907155475

2025年2月21日金曜日

Amy Jones "Literary Devices" [文学技法]

 Literary Devices (Amazon.co.jp)

比喩とか誇張法とか擬人化とか、その類の利いた風な言葉遣いの図鑑みたいな感じ。たとえばカルチャーセンターとかでやっているような小説教室とか、そういうところではこういうことも教えているんだろうな…という感じ。わたしはあまりこういう創作の裏側みたいな話には醒めてしまって興味がないが、例として挙げられる文章はそれなりに面白く、読み込んでしまう。修辞学は意外にやたら好きな人もいるし、試しに読んでみるにはいい本かもしれない。

Wooden Books (2023/9/15)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1952178146

2025年2月20日木曜日

Mark Pallis "Lipsmacking Backpacking: Cooking Off the Beaten Track" [舌鼓バックパッキング:踏み鳴らされた道から外れた料理]

 Lipsmacking Backpacking (Amazon.c.jp)

要はハイキングとかで自然の中での料理の仕方みたいな本だが、レシピ集というよりはもっと基礎的/原始的な各種食材の調理法みたいな感じ。使う物はナイフと携帯コンロと鍋と網くらいだろうか。だいたい切れとか焼けとか煮ろとかそんなレベル。どこで食材を調達するとかいう話はない。食材は普通にスーパーとかで買って来る想定らしい。

従って、普段から普通に料理をしているわたしみたいな人間からすると、特に意外な情報はないが、何かと洋風な感じで、普段の考え方と少し違ってくる。例えばバナナ料理とか普段は考えないからな…。しかし料理なんて本質的にはこんなところで、わたしも普段そんなにレシピとか調味料の分量なんて真剣に考えていない。

総じて、普段あまり料理をしない人のための本かもしれない。あるいは料理をすると言ってもレシピ通りにしか作らない人にとっては、斬新かもしれない。

Wooden Books (2007/5/1)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1904263579

John Michell "Euphonics: A Poet's Dictionary of Sounds" [音調学:詩人の音の辞書]

Euphonics (Amazon.co.jp)

まずeuphonicsという言葉が存在しないようだ。英語の音素一つ一つについて解説と詩がついている。Aの項目を訳してみる。

A

a daring aviator aloft in the atmosphere

ある日本の賢者がなぜ人が建物から落ちる時に"Aaaaaa!"と叫ぶのかを説明している。それは上に行きたいという自然な欲求からであり、"Aaaa!"という音は心身共に上昇の特徴を持つ。

Aにはalacrity, active, happy, alert, agile, attentive aware, awakeな少年少女の意味がある。該当する鳥はlarkであり、次のように語りかけられるだろう:

Audacious avian arise!

Ascend aloft to azure skies!

Alert to your angelic strain

Our aspiration soar again.

こんな調子で続く。どうでもいいけど、さっきhappyという単語が混ざっていたが、それくらい英語ではhの音は存在感がない。この点はHの項目を見ればさらに明らかになるが…というような話に興味があれば面白い本だ。昔、英詩をやたら好き好んでいた時期があり、タッチタイプも英詩を打って覚えた個人的な過去もある。なんか懐かしい気がした。

Wooden Books (2006/2/15)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1904263432