2023年10月21日土曜日

Richard Earl "Mathematical Analysis: A Very Short Introduction" [数学的解析:非常に短い入門]

目次:1.無限を飼いならす 2.すべて変化…フェルマーとニュートンとライプニッツの微積分 3.極限へ:18世紀と19世紀の解析 4.計算機を信じるべきか 5.たくさんの次元 6.その曲の名前を当てます… 7.解析にiを入れる 8.しかしさらに…

タイトルが分かりにくいのはVSIの通例というわけではなく、数学で言うAnalysis[解析]という言葉が日常語と少し違うため。この本は要するに日本で言えば高2~大2くらいで習う微積分の概観。似たような本はいくらでもあるような気もするが、VSIということで一応読んでみた。内容的には普通の高校生ではちょっと難しいかもしれない。この類の洋書でよくある話で、三角関数や虚数も定義から話しているが、三角関数を知らないレベルの人がこの本を読み切れるはずがない。大学生、特にformalな教科書で微細な技術ばかり勉強させられてどこに向かっているのか道を見失っている大学生が最適な対象読者だろう。

第二章までは高校で習う程度の数学かもしれないが、既に第三章でテイラー級数とか偏微分方程式とかリーマン積分とか言っている。第四章は数値計算の話で、類書にはあまり見ない内容ではある。第五章は解析幾何学でベクトル場を扱う。第六章はフーリエ分析。第七章は複素解析。第八章はルベーグ積分とか確率密度関数などその他という構成。

個人的にはだいたい一通り勉強したことがあるような内容だが、まともに勉強すれば普通は数年かかる課程をこの薄い一冊に話としてまとめているので、話が荒いのは仕方がない。数式展開が長くなる部分はAppendixで説明されているが、素人のわたしから見ても、正直なところ全然足りない。VSIでも数学は何冊かあるが、特にこの微積分みたいな話は、学問というより技術なので、自分で手を動かさないと習得できないところがある。あくまでメインの数学書を読んでいる人の副読本みたいな感じだろう。何も知らない人が解析とはどんな感じだろうと思ってこの本を読んでも途中で分からなくなる気がする。そこまで親切な本ではない。

A great choice for bedtime reading for those who have previously studied mathematics at the university level.

Oxford Univ Pr (2023/9/22)
言語: 英語
ISBN-13:978-0198868910

2023年10月10日火曜日

Terry Pratchett "The Light Fantastic" [想像上の光]

Discworldシリーズの第2巻。このシリーズは順に読まないといけないわけではなく、基本的には各巻で完結しているが、この巻については先に第1巻"The Colour of Magic"を読んでおくべき。前の巻も一応完結してはいるが、この巻はそこから直接話が続いていて、主人公は相変わらずRincewind:the wizardとTwoflower: the touristさらにThe Luggageという謎の宝箱だ。第1巻の出版が1983年でこの第2巻は1986年。わたしはここの記録によると第1巻を読み終わってから一週間で読み終わったらしい。

前の巻は良くわからない落ちで、主人公たちはそこから回収されて、どうやって回収されたか謎のままだが、まあいい加減な話なんでどうにでもなるというような…。この時点では作者はDiscworldがこの先どんどん広がっていくとはまだ思っていない。前巻はRincewindとTwoflowerが火災保険のせいで大火事になった町から脱出して誘拐されたり逃げ出したりしていただけだが、この巻は世界の終わりとRincewind個人の人生がリンクしていて話はややシリアスである。最後はちょっと寂しいが、ある程度長い小説を読んだ時の常だ…。相変わらず特に中身はないが、久しぶりにちゃんと終わった小説を読んだ気がする。そしてRincewindもTwoflowerもいずれまた出てくるらしい。

Fantastic. Honestly, I like Twoflower.

Gollancz (2014/8/7)
言語: 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1473205338