目次:1.無限を飼いならす 2.すべて変化…フェルマーとニュートンとライプニッツの微積分 3.極限へ:18世紀と19世紀の解析 4.計算機を信じるべきか 5.たくさんの次元 6.その曲の名前を当てます… 7.解析にiを入れる 8.しかしさらに…
タイトルが分かりにくいのはVSIの通例というわけではなく、数学で言うAnalysis[解析]という言葉が日常語と少し違うため。この本は要するに日本で言えば高2~大2くらいで習う微積分の概観。似たような本はいくらでもあるような気もするが、VSIということで一応読んでみた。内容的には普通の高校生ではちょっと難しいかもしれない。この類の洋書でよくある話で、三角関数や虚数も定義から話しているが、三角関数を知らないレベルの人がこの本を読み切れるはずがない。大学生、特にformalな教科書で微細な技術ばかり勉強させられてどこに向かっているのか道を見失っている大学生が最適な対象読者だろう。
第二章までは高校で習う程度の数学かもしれないが、既に第三章でテイラー級数とか偏微分方程式とかリーマン積分とか言っている。第四章は数値計算の話で、類書にはあまり見ない内容ではある。第五章は解析幾何学でベクトル場を扱う。第六章はフーリエ分析。第七章は複素解析。第八章はルベーグ積分とか確率密度関数などその他という構成。
個人的にはだいたい一通り勉強したことがあるような内容だが、まともに勉強すれば普通は数年かかる課程をこの薄い一冊に話としてまとめているので、話が荒いのは仕方がない。数式展開が長くなる部分はAppendixで説明されているが、素人のわたしから見ても、正直なところ全然足りない。VSIでも数学は何冊かあるが、特にこの微積分みたいな話は、学問というより技術なので、自分で手を動かさないと習得できないところがある。あくまでメインの数学書を読んでいる人の副読本みたいな感じだろう。何も知らない人が解析とはどんな感じだろうと思ってこの本を読んでも途中で分からなくなる気がする。そこまで親切な本ではない。
A great choice for bedtime reading for those who have previously studied mathematics at the university level.
Oxford Univ Pr (2023/9/22)
言語: 英語
ISBN-13:978-0198868910