目次:1.貨幣と銀行業と金融市場 2.リスクの定量 3.オプション価格の古典理論 4.金利 5.信用リスク 6.ファンド管理 7.リスク管理 8.銀行危機と余波
表題通りの本だが、これまで読んだVSIの中で最も数式に頼った本だ。数学自体は高校生でも理解できると思うのだが、こういう話は経済/物理学特有の考え方を理解しないと本題に入る前に前提で引っかかる人が多いし、この本は入門として良さげだ。経済数学にありがちな話で現実を数学に合わせて単純化し過ぎて結果崩壊するというこもとあるが、それにしても一応の理屈を知っておく必要がある。将棋と同じで、現在主流の考え方が最適とは絶対に証明できないようなものの、ナッシュ均衡みたいなもので、ずれたらずれただけ損するというのが普通だ。現在の理論の誤りを突いて大儲けしようと企んでいるにしても、まず現在の考え方を理解する必要はありそうだ。
古典的な話については、昔読んだ「金融・証券のためのブラック・ショールズ微分方程式」が良かったので、志の高い人はそっちに進むべきだろう。しかし、世の中には賢い人がいくらでもいるので、そんな高度な裁定の機会は我々が発見する前に取り尽くされている。個人投資家は専門家に任せたほうがいいし、専門家が何をやっているのかの感じくらいはこの本でつかめる。それに、特に上場株式みたいなものは、既にその価格に専門家の知見が取り込まれていると考えていいのではないだろうか。
とは言え近頃はアルゴリズム取引の暴走だとか誤発注fat-finger syndromeみたいなこともあるので、素人に勝ち目がないわけでもない。ただそういう話は、この本では「将来の課題」ということで、扱われていない。扱われるようになったら、いよいよファイナンス市場は完全に数理的に管理されて、一切のチャンスが失われるのだろうか。とてもそうは思えないが…。
I have never read a VSI that so heavily relies on mathematical formulas. The style is very succinct and easy to follow. A good introduction to the field.
Oxford Univ Pr (2019/3/24)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198787945